介護者にも十分な休息を
レスパイトという言葉知っていますか?
レスパイト(respite)とは、英語で「休息」「息抜き」という意味で、
医療や介護分野で使われています。
育児でも扱われることがあると思います。
在宅で介護をしている家族が、一時的に介護から離れて、休める時間を持てるように支援するという意味で使われています。
何十年も前になりますが、とても印象に残っている患者さんがいました。
仲良しご夫婦の奥様のほうが難病であるALSを発症し、自力での食事はおろか、呼吸さえ難しくなってきました。
家族はご夫婦2人だけ
子どもたちは別世代で離れたところに暮らしています。
自力で十分な呼吸ができないため、
積極的な治療をするなら人工呼吸器を装着するしか方法はなく、
このまま自然に任せるなら、いずれ呼吸ができなくなるのも時間の問題。
急性期の大学病院では、人工呼吸器をつけていたとしても長く入院することはできません。
急性期治療が終わったら退院せざるを得ないのです。
今では、人工呼吸器を付けても、
長期間入院できる病院や施設は増えていますが、
当時は、そのような医療施設は皆無でしたから、呼吸器をつけたら自宅で家族が介護するというのが必須でした。
人工呼吸器の介護は本当に大変です。ご夫婦と医療者、地域の支援者間でたくさん話し合いました。
日頃から呼吸器管理に慣れている私でさえも、自宅で24時間介護するのは、複数人のマンパワーがないと厳しいと感じています。
そんな中、ご主人は、在宅サービスを利用しながら、自分が介護をすると宣言したのです。
それからというもの、ご主人には、毎日のように手技の練習をしに病院に通ってもらい、在宅サービスを整えて自宅に退院されました。
しかし半年ほどした頃でしょうか?
ご主人が介護疲れから体調を崩して入院してしまったのです。
さすがに人工呼吸器の管理は、主介護者がいないと在宅療養は困難です。
そこで奥さまは、旦那さまが退院するまでレスパイトという形で入院されました。
その後は、在宅介護の合間に定期的にレスパイトを併用しながら過ごされていましたが、
ある日とうとう旦那様が「もう無理です、限界です」と本音を出されたのです。
もしも人工呼吸器が外れてしまったら、奥さまは呼吸ができなくなります。呼吸ができなくなれば当然命を落とします。
そんな緊張感のある介護です。
どんなに愛する家族であっても、
自分の時間をすり減らし、トラブルが起きないように細心の注意を払いながらの介護は、相当の神経や穏やかな心をすり減らします。
「限界宣言」をした旦那さま
結局は、更なるサービスの拡大と、離れて暮らす子どもたちにも助けてもらうという対策を取り、自宅に帰られました。
高齢化、核家族化が進む中、
表面的には見えないところで、
介護の限界を感じている方がたくさんいることを思うと、とても心が痛くなります。
私にできることがあればなんでもやりたいと思うのです。
どうか1人で悩まないでください。